*春の歌(6句)*

 9.花の色はうつりにけりないたつらに     わか身よにふるなかめせしまに ( 小野小町 )
15.君がため春の野に出でて若菜摘む    我が衣手に雪はふりつつ ( 川原左大臣 )
33.久かたの光のどけき春の日に       しづ心なく花の散るらむ ( 紀 友則 )
35.人はいさ心も知らずふるさとは        花ぞむかしの香ににほいける ( 紀貫之 ) 
61.いにしえの奈良の都の八重桜       今日九重に匂いぬるかな ( 伊勢大輔 )
73.高砂の尾の上の桜咲きにけり       外山の霞たたずもあらなむ  ( 権中納言匡房 ) 

*夏の歌(4句)*

2.春過ぎて夏来にけらし白妙の         衣ほすてふ天の香具山 ( 持統天皇 )
36.夏の夜はまだよひながら明けぬるを    雲のいづこに月やどるらむ ( 清原深養父 ) 
81.ほととぎす鳴きつる方を眺むれば      ただ有明の月ぞのこれる  ( 後徳大寺左大臣 ) 
98.風そよぐ奈良の小川の夕暮れは     みそぎぞ夏のしるしなりける  ( 従二位家隆 ) 

 

*秋の歌(16句)*

1.秋の田のかりほの庵のとまをあらみ     我がころも手は露にぬれつつ ( 天智天皇 )
5.おく山に紅葉ふみわけなく鹿の        声聞く時ぞ秋はかなしき  ( 猿丸大夫 )
17.千早ぶる神代もきかず龍田川        からくれなゐに水くくるとは  ( 在原業平朝臣 ) 
22.吹くからに秋の草木のしをるれば      むべ山風をあらしといふらむ  ( 文屋康秀 ) 
23.月見ればちぢにものこそ悲しけれ     わが身ひとつのあきにはあらねど  ( 大江千里 )
29.心あてに折らばや折らむ初霜の       おきまどはせる白菊の花  ( 凡河内躬恒 ) 
32.山川に風のかけたるしがらみは      流れもあへぬもみぢなりけり ( 春道列樹 ) 
37.白露に風の吹きしく秋の野は        つらぬきとめぬ玉ぞ散りにける  ( 文屋朝康 )
47.八重むぐらしげれる宿のさびしきに     人こそ見えね秋はきにけり  ( 恵慶法師 ) 
69.あらし吹く三室の山のもみぢ葉は      龍田の川のにしきなりけり  ( 能因法師 ) 
70.寂しさに宿を立ち出でてながむれば    いづこもおなじ秋の夕暮  ( 良暹法師 )
71.夕されば門田の稲葉おとづれて      芦のまろやに秋風ぞ吹く ( 大納言経信 ) 
79.秋風にたなびく雲の絶え間より       もれ出づる月の影のさやけさ ( 左京大夫顕輔 )
87.むらさめの露もまだひぬまきの葉に     霧立のぼる秋の夕暮  ( 寂蓮法師 ) 
91.きりぎりす鳴くや霜夜のさむしろに     衣かたしきひとりかも寝む  ( 後京極摂政前太政大臣 ) 
94.みよし野の山の秋風小夜ふけて      ふるさと寒く衣うつなり  ( 参議雅経 ) 

*冬の歌(6句)*

4.田子の浦にうちでて見れば白妙の     富士の高嶺に雪はふりつつ ( 山部赤人 )
6.かささぎのわたせる橋におく霜の       白きを見れば夜ぞふけにける  ( 中納言家持 ) 
28.山里は冬ぞさびしさまさりける        人めも草もかれぬと思へば  ( 源宗于朝臣 ) 
31.朝ぼらけ有明の月と見るまでに       吉野の里にふれる白雪 ( 坂上是則 ) 
64.朝ぼらけ宇治の川霧たえだえに      あらはれわたる瀬々の網代木  ( 権中納言定頼 )
78.淡路島通ふ千鳥の鳴く声に        幾夜ねざめぬ須磨の関守 ( 源兼昌 )






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