*作者 藤原清輔朝臣(ふじわらのきよすけあそん)
( 現代語訳 )
この先もっと長く生きていれば、辛いと思っている今この時もまた懐かしく思い出されてくるのだろうか。
辛く苦しいと思っていた昔の日々も、今となっては恋しく思い出されるのだから。
( 言葉 )
【永(なが)らへば】
動詞「ながらふ」の未然形に接続助詞「ば」がついて、「もし〜なら」という仮定を示します。
「この世に生き長らえるなら」という意味です。
【またこの頃(ごろ)や しのばれむ】
「や」は疑問の係助詞です。
「しのば」は動詞「しのぶ」の未然形で、「懐かしく思い出す」という意味。
「れ」は自発の助動詞「る」の未然形で、「む」は推量の助動詞「む」の連体形です。
【憂(う)しと見し世ぞ 今は恋しき】
「憂(う)し」は形容詞の終止形で「辛い、苦しい」という意味です。
「見し」の「し」は過去の助動詞「き」(実際の体験の回想)の連体形です。
「恋しき」は形容詞「恋し」の連体形で、係助詞「ぞ」の係り結びです。
全体では「辛いと思っていたあの当時も今では恋しく思い出されるなあ」という意味です。
( 鑑賞 )