*作者 相模(さがみ)
( 現代語訳 )
恨んで恨む気力もなくなり、泣き続けて涙を乾かすひまもない着物の袖さえ
(朽ちてぼろぼろになるのが)惜しいのに、
さらにこの恋のおかげで悪い噂を立てられ、朽ちていくだろう私の評判が惜しいのです。
( 言葉 )
【恨みわび】
「〜わぶ」は「気力を失う」という意味。
「恨む気力も失って」という意味です。
【ほさぬ袖(そで)だに】
「ほさぬ袖」は、いつも泣いて涙を拭いているので「乾くひまもない袖」という意味です。
副助詞「だに」は「〜でさえ」のような意味で、程度の軽いものを示して、重いものを類推させます。
【あるものを】
「ある」の前に「口惜し」を補って考えます。
「ものを」は詠嘆をこめた逆接の接続助詞で「袖が朽ちるのさえ悔しいのだから」と、
後で恋で悪い噂が立つことと比較しています。
【恋(こひ)に朽ちなむ名こそ惜しけれ】
「な」は完了の助動詞「ぬ」の未然形で、「む」は推量の助動詞「む」の連体形です。
「名」は「評判」の意味で、「こそ」は強調の係助詞です。
また「惜しけれ」は形容詞「惜しき」の已然形で「こそ」の結びになります。
「失恋の噂で汚れてしまいそうな私の評判がとても残念だ」という意味になります。
( 鑑賞 )